二月に引っ越しました。一人暮らしを始めたんです。
部屋には何もありませんでした。引っ越したばかりですからね。何もないんですけど、あのときはわくわくしていました。自立、というと大げさですが、一歩踏み出したな、という感じですかね。一人暮らしを始めるというのは、そういうものでしょう。
それで、何か置きたくなったんですよ。
ペットは無理でした。犬とか猫とか、インコでもいいんですが、一人暮らしで飼うのは私には難しかった。留守にすることもありますしね。
そこへいくと植物のほうは、手軽に買えるというイメージがあったんです。難しいとも思っていませんでした。
ネットで見たんですよ。ダイソーに観葉植物が売っていて、パキラとかガジュマルとか、そういうものが置いてあるらしい。育てやすい、とも書いてありました。それで買いに行きました。何かのついでに寄ったんじゃありません。それを買うために行ったんです。
正直に言うと、店のことはほとんど覚えていません。園芸コーナーのどのあたりだったのか、他に何が並んでいたのか、いくらだったのかも思い出せない。買ったのは私なんですけどね。
覚えているのは、鉢が小さかったことです。木のほうもまだ小さかった。パキラとガジュマルを持って帰りました。
帰り道は、ちょっと嬉しかったですね。小さな幸せ、というやつです。ものを買ったというより、生き物を連れて帰ってきた、という感じでした。
とはいえ、大それたことを考えていたわけじゃないんですよ。緑っていいなぁ、というくらいのものです。だいたい、植物ってそんなものでしょう。
家に着いて、台所のシンクの横に置きました。
冬は止まっていて、春に動き出す
何年か置いているうちに、わかってきたことがあります。
冬になると、色が悪くなるんですよ。黄色くなるものもありますし、黄色まではいかなくても、なんとなく色がさえなくなる。それが春に近づくと、新芽が出はじめる。また元気になってくるんですね。
調べてみたら、そういうものらしいです。パキラがよく伸びるのは四月から六月と、九月から十一月なんだそうです。冬は成長が止まって、水を吸う力も弱くなる。ガジュマルのほうも生育期は春から秋で、秋から冬にかけては、あまり水を欲しがらない。
だから冬に水をやりすぎると、根を傷めると書いてありました。向こうが止まっているのに、こちらだけせっせと世話をしてもしょうがない、ということなんでしょうかね。
今は寝室に置いています
途中で置き場所を変えました。今は寝室に置いています。
うちで一番日当たりがいいのが寝室なんですよ。それに寝室なら、目も届きますからね。
あの百円の鉢が、五年か六年になります。まだ育っていますよ。
長く育てていると、愛着が湧いてくるんです。葉っぱが出てくると、そう思いますね。
緑っていいなぁ、というくらいで買ったものなんですが。
こうの次郎
昼は働いて、夜にちょっと考え事をしています。写真を撮ったり、熱帯魚を飼ったり。
本も書いています。→ 著書について

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